-ERIKOが出会った世界の “Lealta” な女性 vol.2- 日本語で歌う盲目の歌手、パトリシア・エレーナ・ヴリエグさんの生き方
陶器のように滑らかな歌声は、すっと心に入りゆっくりと行き渡っていって、一度聴いたらいつまでも心に残っていくよう。今回ご紹介するのは、中米のパナマを拠点として、世界中でコンサートを開催し、日本でも何度も演奏を行ったことのある、パナマ人ジャスシンガーのパトリシア・エレーナ・ヴリエグさん。
「お会いできて嬉しいです」と、流暢な日本語で挨拶をしてくれました。部屋には、シンセサイザー、ギター、太鼓などが置いてあり、小さなスタジオのようになっているその空間が、彼女が生活する住まいです。
中米パナマに生まれたパトリシアさん
パトリシアさんの住むパナマは、南米と中米とを結んでいます。去年は運河の拡張工事が終わり、これからさらに人や物の行き来が増えることが予想されています。
ラテン国に住むパナマ人にとって、音楽は日常的に不可欠なものですが、パトリシアさんにとっても人生で欠かすことのできないものの一つです。
盲目のミュージシャン
パトリシアさんは先天性の全盲で生まれつき目が見えません。今回、パトリシアさんと私が出会うきっかけを作ったのは、“日本語”でした。彼女は日本語を流暢に話せるだけでなく、パソコンを使って文章を書くこともできます。そんな彼女と日本語の出会いは、彼女が小学生の頃に遡ります。
「同じクラスに日本人の子がいて、どうしても友達になりたくて、週末にその子の家族の家に電話をかけて日本語を少しずつ教えてもらったの。音楽においても、日本とラテンアメリカの音楽は、意味をしっかり理解すると表現や感性に似ている部分がたくさんあるの」
彼女は子供のように好奇心旺盛で、昔の情景を思い出しながらワクワクした様子で話しをしてくれました。その中で、会話と会話の間で時折ふと見せる切ない横顔から、彼女の美しさがこれまでの人生の苦労から生まれたのだと感じました。
変えられない境遇に対してどう向き合うか?
人は自分が変えることができない境遇に対して、どのように接していけばいいのでしょう。パトリシアさんはこのように捉えています。
「La vida es mas grande, sabiduría. Hay que escuchar la vida.」(人生は偉大で叡智です。私たちは人生から発せられる声に耳を傾けなくてはいけません)
つまり、自分の人生を切り開いていくといった能動的な姿勢になる前に、すでに人生が自分に対して語りかけていることに耳を澄ませ、受け入れていくことが大切だと彼女は言います。その背景には、自分の命に対する謙虚な姿勢あるからこそだと思います。
「La música no es mi profesión, es mi idioma」(音楽は私の仕事ではありません。私の言葉です)
全盲という境遇を受け入れ、音楽を奏でることをやめないパトリシアさんの歌声は、聴く者の心を揺さぶります。
人生に目標を持って、切り開いていくのも一つですが、時には人生や出来事が語りかけてくる“声”に耳を傾ける時間を持つことも大切だと、彼女の人生は教えてくれています。
Photo:
Patricia vlieg(Top)
ERIKO(2枚目&3枚目)
関連記事
« 次来る食材はブロッコリー!改めて知りたい、そのスゴい栄養価って? 乾燥肌を内側からレスキュー。女子が積極的に食べるべき「黒い食ベ物」とは? »