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「幸感力」インタビューVol.12『自分がベストだと思う時期に命を育む権利を、世界中のすべての女性に』公益財団法人ジョイセフ小野美智代さん

「幸感力」インタビューVol.12『すべての女性がLove 、Act、 Decideできる世界をめざして』公益財団法人ジョイセフ小野美智代さん

2016年6月21日 • 「幸感力」インタビュー, Family, Health

今回の「幸感力」インタビューは、途上国の妊産婦と女性の支援をしている公益財団法人ジョセフで働く小野美智代さん。二人の娘さんの子育てをしながらグローバルな活動をする小野さんに、ジョイセフの支援や女性の幸せについてお聞きしました。

プロフィール
小野美智代(おの・みちよ)
静岡県生まれ。立教大のジェンダーフォーラムに勤務後、2003年に発展途上国を中心に世界中の女性が、産む、産まない、また何人産むかを自ら選択でき、安心して子どもを出産できるように取り組む国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)へ。現在、市民社会連携グループ長。静岡県三島市発の健康美支援団体HiPs代表。三島市在住&新幹線通勤、二女の母。
ジョイセフ:https://www.joicfp.or.jp/jpn/
HiPs:http://hips-net.org/
小野美智代さんブログ:http://joimicchi.exblog.jp/

ジョイセフの活動は「途上国の妊産婦と女性を守る」こと

-ジョイセフの活動と創設された経緯についてお聞かせください。

小野美智代さん(以下 小野 敬称略):ジョイセフは、途上国の妊産婦と女性の命と健康を守るために日本で生まれた国際協力NGOです。女性が望んだ時に妊娠・出産ができる、望まないなら産まない選択ができる、世界中どの国でもそれは女性の人権です。日本初の女性国会議員である加藤シヅエさんも創設に関わり、1995年から6年間、会長を務めていました。国連機関や国際機関からの要請を受け、戦後の日本が実践してきた家族計画・母子保健の分野での経験やノウハウをかつての日本と同じような妊産婦死亡率の高い国に広めようと立ち上がったのがジョイセフです。2016年4月に48周年を迎えました。

-日本の戦後の経験、詳しく教えてください。

小野:グラフを見ると一目瞭然ですが、1952年から1955年の間横ばいになり、この間に妊産婦の死亡率が少し上がっています。この頃から日本は、妊娠を望まないのであれば事前に防ごうと「家族計画」の普及に拍車がかかり出しました。その普及に一役買ったのがジョイセフの姉妹団体の「日本家族計画協会」です。官・学・民が一体となって、全国での家族計画や母子保健の取り組みにより日本は妊産婦死亡率を下げることに成功し、その数値は世界で最も低くなりました。

日本の乳児死亡率_妊産婦死亡率-01[1]

未だに途上国では、立て続けの妊娠、多産が命を危険にさらし、死亡率を高める原因に結びついています。アフリカのある地域では、中絶するのにお腹を殴ったり、闇医者に処方された毒草を飲む地域もあるのです。ジョイセフの支援の主なターゲット層は、月経が始まる頃から閉経するまでの女性ですが、閉経後に発症する疾患も対象です。しかし、アフリカなどの貧困地域では14〜15歳で妊娠・出産しはじめることが多く、支援が急務なのは思春期の少女・少年たちなのです。

-小野さんはなぜジョイセフに入団しようと思ったのですか?

小野:学生時代、カンボジアを訪れたときに出会った友達(女の子)がいました。再度カンボジアを訪れ、彼女に会いに行くと、「出産時に亡くなった」と聞かされました。当時の私には「出産」で亡くなるということが腑に落ちませんでした。日本では信じがたいことですが、カンボジアの農村では珍しくないことでした。帰国後にジョイセフが邦訳をしている「UNFPA世界人口白書」でカンボジアについて調べました。そこにはカンボジアの妊産婦の死亡率や、当時のカンボジア人女性の平均寿命は「38歳」といった記載がありました。さらに、カンボジアより妊産婦死亡率の高いネパールやアフガニスタンは男性の平均寿命の方が女性より高かったのです。この事実と平均寿命の低さに驚愕してしまいました。妊娠・出産時に亡くなる率が高い国ほど女性の平均寿命が低いと、このとき初めて知ったのです。こうして私はジョイセフに興味を持ち始め、3年半後に入団しました。

「幸感力」インタビューVol.12『自分がベストだと思う時期に命を育む権利を世界中のすべての女性に』公益財団法人ジョイセフ市民社会連携グループグループ長 小野美智代さん

働き盛りが産み盛りー子育てと仕事は「両立」ではなく「バランス」

-忙しい毎日の中、子育てで大切にしていることは何ですか?

小野:我慢をしないことです。自分だけで溜め込まない、抱え込まない。子育ては自分だけの役割とは全く思っていません。当然、夫婦が基本となって子育てをするのですが、子どもは社会みんなで育てるもの、地球の未来だと思っています。困った時は色々な人に頼ります。保育園や周りの助けてくれる人への感謝の気持ちでいっぱいです。

こんな私も、産むまでは頭でっかちに考えていました。結婚して2年位は仕事が楽しく、子供はまだ先だと考えていました。そんなとき、母の日に主催したイベントでバースコーディネーターの大葉ナナコ さんにお会いしました。私の周りには働きながら子育てをしている女性が少なかったのもあり、出産するのはなんとなく「今じゃない」と思っていました。そんな私が、5人のお子さんを育てながら起業し、講演や執筆活動で全国を駆け回っていた大葉さんから、「働き盛りが産み盛りよ。これから働き続けたいのだったらなおのこと。いつか産みたいと思うんだったら今でもいいんじゃない?産まない理由を仕事のせいにしているなら今よ」と言われ、ハッとなりました。美しくバイタリティに溢れる大葉さんのこの言葉に影響を受け、当時、4年間服用していた低用量経口避妊薬(ピル)を止め、自然の流れに任せることにしました。

その3ヶ月後、私は長女を妊娠しました。多くの未婚で働く女性は、キャリアを存続させながら、子育てと仕事を「両立」したいと考えていると思います。仕事ができる女性ほど、両方を完璧にしたいという完璧主義な人が多いです。私もかつてはそんな風に考えていたことがありましたが、いま私は、子育てと仕事は「両立」しなくてもいいと思っています。「両立」という言葉がプレッシャーとなり、結婚をしても出産を先延ばしにしている女性が多いと思います。

私は、仕事も子育ても「バランス」が大切だと考えています。仕事も子育ても両方100点取る必要ない。60点くらいでいいのではないでしょうか。その力のかけ度合いといいますか、自分の中での「バランス」は日によって変わり、ある日は家庭が8割、仕事は2割。またある日は仕事が10割、子育て0割なんてこともあります。自分なりのバランスに納得し、それが私流なのだと思えたら、気持ちが一気にラクになりますよ。悩むことはない! 娘もこれが母親だと思っています。娘のことは年の離れた後輩だと思っていて、その後輩から見てロールモデルの一人となるような、リスペクトできる女性でありたいと思っています。だから、夫と連携・協力は不可欠。私にとってちょうど良いバランスで子育てをしながら、仕事もバリバリ働いています。もちろん、どちらも無理なく、やれることをやれる時にですが。

-小野さんご自身のために大切にしていることはありますか?

小野:定期的にジョギングしています。3年前は今よりも10キロくらい太っていました。産後太りのピークだった3年前に私は流産を経験し、2回もぎっくり腰になりました。治療院の先生に腹筋と背筋を鍛えるようにと軽い運動を勧められましたが、遠距離通勤や忙しさを口実になかなか始められませんでした。定期的な運動をし始めたのは、東日本大震災後に、ジョイセフの活動で支援のために、東北出張に行ったときに出会った女性の言葉がきっかけです。

そのとき、私は避難所で暮らす女性を取材していました。その中の一人、ある60代の女性は37歳の娘さんを津波で亡くし、お孫さん3人を育てていました。娘さんは息子たちを助けようと、彼らを屋根や高台に押し上げるように乗せた後、第二波が来て体力が尽き、自分の体を自力で持ち上げることができずに流されてしまったそうです。「次は、あなたの住む東海地方にも地震がくるかもしれない。だから体力をつけておいてね」と言われました。この言葉を聞いて愕然としました。もし今、震災が起こったら私の体力では娘も自分も救えないと思い、まずは痩せて、体力をつけることにしました。そこから週一で加圧トレーニングに通い、ママ仲間とジョギングをするようになりました。そして、2013年に地元で「HiPs 」という健康美支援団体を女性だけで立ち上げました。世界的に活動しているジョイセフとはまた違った、地元でのアクションです。毎月、満月の日にみんなでジョギングする企画などをやっています。

「減災」のために。私たち女性が健康であることが、次の災害を減らすことに繋がると考えています。“Think globally, act locally”—これは私のモットーであり常に意識している言葉で、地球に暮らす一人としての未来を考える。そしてその理想の未来のために足元からできることをやろう!という意味です。出産して母になり、東日本大震災後の現地での経験からも、ローカルでも行動したいと思うようになりました。グローバルな「ジョイセフ」とローカルな「HiPs」の活動は、今の私にとって心地よい「バランス」なのだと感じています。

「幸感力」インタビューVol.12『自分がベストだと思う時期に命を育む権利を、世界中のすべての女性に』公益財団法人ジョイセフ小野美智代さん

自己肯定感を高めることは「幸感力」に繋がる

-小野さんのバイタリティの源は何だと思いますか?

小野:「バイタリティ」という言葉は毎年届く年賀状にもよく書かれているのですが、自分では無意識なんですよね(笑)。友達には幼稚園の頃から変わらないと言われます。バスケ部の部長やったり生徒会をやったり、なにかにつけリーダー役を経験することが多かったです。子供の頃から何かをゼロから立ち上げたり、人が楽しいと思うことや笑うことを企画することが好きでした。無いなら、生み出そう、自分で創っちゃおう! と思いますね。

-女性が幸せを感じること、また、今回のインタビューのテーマである「幸感力」について小野さんの考えをお聞かせください。

小野:女性は子宮があり、命を産む生物。つまり「次世代を産む」ということが、自分だけではなく、社会や世界にとっても良いことが女性のハッピーの源になっている気がします。自分にも他者にもいいことがセットになって、初めて幸せを感じるのだと思います。私自身もそうです。

それと、自己肯定感が備わっていないと「幸感力」は感じ難いですね。自分を愛することで、初めて他者を愛することができます。自分に自信がない人ほど、他人の評価を気にして生きていますよね。発展途上国で私が出会った女の子たちは自信を持って夢を答えますし、自分に対する自信があります。ファッションや髪型を選ぶ基準は、流行ではなく自分に似合うかどうか、好きか嫌いか。みんなと同じものを選びがちな日本人が明らかに途上な部分です。「幸感力」が高い人は自己肯定感が高く、自分自身の力を信じる姿勢にブレないのだろうと思います。日本の10代、20代の女性の死因で多いのは「自殺」です。かたや、世界的に見るとそれは「妊娠・出産」なのです。

-2016年3月3日にスタートした「I LADY.」とは、どのようなキャンペーンですか?

「幸感力」インタビューVol.12『自分がベストだと思う時期に命を育む権利を世界中のすべての女性に』公益財団法人ジョイセフ市民社会連携グループグループ長 小野美智代さん小野:私たちは日本の女の子たちの自己肯定感を上げるために「I LADY. 」というキャンペーンを立ち上げました。日本の女性誌では「女子力」は「モテ力」として謳われることが多い。その影響もあってか、男性目線の女性像を目指す女性は多く、そんな人ほど他人から評価される(モテる)ことを目的としているので、自分に自信がありません。

「ジョイセフ」と「電通 ギャルラボ」の活動「GIRL meets GIRL PROJECT 」でピンキーリングを発売しました。

「幸感力」インタビューVol.12『自分がベストだと思う時期に命を育む権利を世界中のすべての女性に』公益財団法人ジョイセフ市民社会連携グループグループ長 小野美智代さん

販売開始から5年の間に、口コミで可愛いと評判になり11万個以上売れました。このピンキーリングは可愛いだけでなく、販売価格500円のうち200円が途上国の女の子を支援する寄付金になります。

日本の偏った報道の影響もあり、途上国は貧しく不衛生で可哀想なイメージを持っている方が多いですが、私が出張先で出会うのは、お洒落が好きでいつも笑っていてキラキラしている女の子たちなのです。可愛いがきっかけで、途上国にはどんな女の子がいるのかを知り、世界を見ることで自分自身を見つめ直すきっかけになって欲しいと2013年には「世界女の子白書 」も出版しました。

「幸感力」インタビューVol.12『自分がベストだと思う時期に命を育む権利を世界中のすべての女性に』公益財団法人ジョイセフ市民社会連携グループグループ長 小野美智代さん

日本ではお腹が痛くなったり、どこか調子が悪くなったりしてから病院に行く。そしてその大半は、薬が処方されるか、手術で治ります。でも、途上国では行く病院が近くにありません。妊娠・出産時も病院や施設がないため、あっても水道もなく電気もない、薬もない、手術できる医師もいないので命を落とす確率がぐっと高くなります。今でもある日突然、女性だからという理由で命を落とすリスクが高い国・地域は現在でもたくさんあるのです。
世界最長寿国の日本ではまず死ぬリスクが低い。安心安全に暮らせるがゆえに、自分の身体について無知な人が多いのだと思います。健康を損なって初めて医者や薬に頼ればいいという認識で、若い人は特に自分の体は自分で守る、病気を予防するという意識が低いように思うのです。

書籍だと購入して読む人にしか届かないので、より多くの人にいまの自分に気づいてほしいと、ILADY.では、インターネット上で「新・女子力テスト 」を展開しています。ゆくゆくは、私たちが支援している国でも同じテストを実施し、世界中の「真の女子力」を比較できたらいいなと思っています。明らかに「Love度」は海外の方が高いのではないかと思っています。比較することで日本の女の子に何か気づきがあれば・・・。自己肯定感の低さを認識して、「もっと自分を大切にしよう」と積極的に身を守る知識をつけてもらえたと考えています。

また「I LADY.」では「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」について知り学ぶことができます。日本では1994年から使用されている言葉ですが、世間一般にはまだまだ浸透していません。これは、女性が身体的・精神的・社会的な健康を維持し、子どもを産むかどうか、いつ産むか、どれくらいの間隔で産むかなどについて選択し、自ら決定する権利のこと。基本的な人権です。海外では一般的な言葉です。先進国の多くの中学では「ヘルススタディ」高校では「ウェルネススタディ」として、月経や性行為、命のはじまりそのものについて学びます。

日本では性教育という言葉はありますが、実態は、学校は家庭任せ、家庭は学校任せにしてしまうところがあり、まともに性についての教育を受ける機会が乏しい。氾濫しているインターネットの情報の中で、どれが正しいのかもわからない。性交渉といえば、男性目線のアダルトビデオの中で作られた映像が基本になってしまっています。避妊を女性から言い出すと嫌われるのではないかと思っていたり、避妊は男性の責任だと思っている女性も少なくありません。でもそれはおかしなことだと思います。自分が妊娠したくなくても、男性にNOと言えない女性達。結果、望まない妊娠→中絶、望まない妊娠→出産→幼児虐待、が起きています。性感染症も増えています。自分の身体を自分で守るのは基本中の基本です。「新・女子力テスト」の点数が低い人には、それをわかってもらえるように解説を付けています。

I LADY. http://ilady.world/

取材・文・撮影/成松阿留奈


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