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人間が本来持っている「思いやり」という本能

人間が本来持っている「思いやり」という本能

2014年6月16日 • Love & Relationship, Mind & Heart

もし電話や自宅訪問で、ボランティア団体、NPO団体、チャリティー等から「寄付をお願いします」と言われたら、私たちはどう対応するでしょうか? 実は大半の人が寄付をするということが分かっています。逆にEメールやDMでの寄付のお願いを受けた場合、寄付率は格段に下がるのだとか。これは、私たち人間は瞬時の判断を迫られた時、自分のことより相手を優先して行動をするという証です。 1

世の中には危険を顧みず、線路に落ちた人や川や海でおぼれている人を助ける人々がいます。これは瞬時の判断で行われたことで、極めて利他的だと言えます。イェール大学で行動科学を研究するデイヴィッド・ランド氏は、「こういった勇敢な行動に出た人々に話を聞いてみると、やはりその瞬間は直感が大きなウエイトを占めているようなんだ。彼らは皆口を揃えてこう言ったよ。『考える暇はなかった。ああするしかなかった』とね」と言います。

さらにランド氏は、「人間は元々自分勝手だから、善い行いをしようと思ったら、自制心を働かせて身勝手な行動をしないよう努力しないといけない、と思っている人も多いかもしれない。でも実は、僕たち人間は無意識のうちに他人に対して思いやりを持った行動をするようにできているのに、立ち止まって考える時間があると、結局利己的な判断をしてしまうことが多いんだ」と分析します。 2

また、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者・ダニエル・カーネマン氏は、人間の意思決定には、

・瞬間的で直感的で感情的な判断
・時間をかけて行われる論理的な思考・計算による判断

の2種類の脳の働きが影響を及ぼしていると言います。 3

この脳の働きを実証するため、ランド氏はこのような実験を行いました。


最初の実験では、参加者を4人ずつのグループに分け、それぞれに40セントずつ渡しました。そして募金箱に好きな金額を寄付するよう指示しました。募金箱に入れたお金は2倍にしてグループのメンバー4人に平等に分け与えられるということ、それぞれがいくら寄付したのかは秘密にする、という前提で。このシナリオでは、もし参加者が「できるだけ多くのお金が欲しい」と自分の利益だけを追求するのであれば、自分の手元にお金をキープするのがベストです。でも「皆が同じ額をもらえるんだから全部寄付しよう」と相手のことを思って寄付することだってできます。実験の結果は、瞬時の判断で寄付をした参加者はほぼ全額を、1~10秒考えていた参加者は70%の額を、10秒以上考えていた参加者は50%の額を寄付するというものでした。


次の実験では、まず一部の参加者に寄付額を直感で判断してほしい、その他の参加者にじっくり考えて判断してほしい、という指示を与えて寄付をしてもらうことにしました。するとやはり、直感で判断するよう言われた参加者の寄付額が多くなりました。さらにその後、一部の参加者に寄付額を瞬時に判断してほしい、その他の参加者には10秒待ってから判断してほしいと指示をしたところ、やはり瞬時に判断をした参加者の寄付額が多くなりました。

ノッティンガム大学教授・Simon Gächter氏は、「過去数十年もの間、専門家は皆、人間は本来自分勝手な生き物であると信じてきた。でもどうやら我々の本能的直感は、社会においてより協調的な行動を起こすもののようだ」と結論付けます。 4

豊かな人間関係を築き、よりよい社会をつくるために、私たちが備え持っている「相手を思いやる」という大切な本能。その本能がより発揮できるよう、時には合理的に考えることをやめて、心の赴くまま、直感に身を任せてみるのもよいかもしれません。

脚注:

  1. Adrian F. Ward、”Scientists Probe Human Nature–and Discover We Are Good, After All”、Scientific American、2012年11月20日
  2. ”Intuitive Cooperation and the Social Heuristics Hypothesis: Evidence From 15 Time Constraint Studies”、 Social Science Research Network (2013)
  3. Daniel Kahneman、”Thinking, Fast and Slow”、出版社: Penguin (2012/5/10)
  4. Simon Gächter、”Human behaviour: A cooperative instinct”、Nature 489, 374–375 (20 September 2012)

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