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ヴィーナスに捧げられた天空の町 エリチェを訪ねて

ヴィーナスに捧げられた天空の町~エリチェを訪ねて~

2016年11月11日 • Travel

なぜだかわからないけれど、無性に“城砦の町”に惹かれるのです。城砦の町が点在するヨーロッパでは、有名、無名に関わらず、そんな山の上の古都を訪ねるのが旅のお楽しみ。シシリー島では標高750mの天空の町を訪れました。ギリシャ神話で、ゼウスの妻ヴィーナスの住まいのあった場所として語られるエリチェの町です。

トラパニからぐんぐんと標高を登る山道のドライブからエリチェへの旅は始まります。カーブを描きながら風に揺れる草原を抜けていくと、どんどん下界が遠ざかり、やがて町への入り口となる石門にたどり着きます。門をくぐった先に続くのは、石畳の坂道が圧巻な中世のままの古い町並み。ぐるりと城壁で囲まれた町の入り口には教会があり、細い道に沿って石造りの屋敷が建ち並びます。

トロイの末裔により開かれ 中世のまま時が止まった町

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旧市内に一歩足を踏み入れると、視線の先に続くのは整然と繰り返される幾何学模様が美しい石畳の坂道。永い歳月の間に、繰り返し道行く人々の靴底によってすっかり滑らかに磨き上げられてしまったのでしょう、とろりと艶のある光沢を放っています。

土産物屋やカフェ、ホテルが並ぶメイン通りを抜け、足の向くまま迷路のように入り組んだ小径を歩いていくと、いつしか山の上に建つ古城が目の前に現れるのです。

ノルマン時代に建てられたこの城があるのは、ヴィーナスの神殿があったとされる場所で、エリチェの町の一番高いところ。まさに断崖の頂上にそそり建つ城といった風情です。現在は管理する人もなく、静寂の中に語られることのない数々の物語を封印してしまったかのようなひっそりとした佇まいですが、ここから眺める絶景はシチリアの城砦都市の中でもひときわ。遥か眼下にトラパニの街と塩田を望み、晴れた日にはティレニア海に浮かぶエガディ諸島やチュニジアまでを一望するダイナミックなものです。

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エリチェはもともとトロイの末裔と言われるエリミ人によってつくられたと伝わり、イタリア南部のほかの都市と同じく、その後フェニキア人やギリシャ人、ローマ人からノルマン人と時代によって支配者が交代しながらその歴史を刻んできた町。

なぜ、人々はこんな断崖絶壁の上に城をつくったのかはわかりませんが、城壁がつくられたのは紀元前8世紀にさかのぼります。その後、2千800年余りにわたり、様々な民族による物語がつむぎだされ、それはこの先もずっと、未來永劫、この地が滅ぶときまで続くのかもしれません。

標高が高いことから、しばしば霧の中に姿を隠してしまうことも多く、そんなところも旅人のロマンをかき立てるところ。エリチェへは、パレルモから車で3時間ほど。電車やバス、ロープウェイを使っても行くことができるので、シシリー島を訪れた際にはぜひ足を伸ばして欲しいと思います。

  • イタリア・エリチェの位置

Photo: Mayu Kobayashi


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