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映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』 ~信念に生きるということ~

映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』 ~信念に生きるということ~

2014年2月4日 • Movies & TV, Work

【映画情報】

ストーリー:「ニューヨーク・タイムズ」の人気ファッション・コラムと社交コラムを担当する名物フォトグラファー、ビル・カニンガムは、ニューヨークの街角で50年以上にわたって毎日ファッショントレンドを撮影してきたストリートファッション・スナップの元祖的存在。そんな彼の知られざる私生活と仕事ぶりを追ったドキュメンタリーは、ファッションだけでなく、ビルをはじめとしたニューヨーカーの生き方を鮮やかに映し出している。

原題:Bill Cunningham New York
製作年:2010年
製作国:アメリカ
上映時間:84分
配給:スターサンズ/ドマ
公式サイト http://www.bcny.jp/

ファッション界で最も影響力のある人物の一人で「女帝」と呼ばれるアメリカ版ヴォーグの編集長、アナ・ウィンターが、彼女を撮ろうとする多くのフォトグラファーの中でも唯一足を止め、「私たちは毎朝、彼のために服を着るのよ」と敬愛の念を抱く人物が、ニューヨークの名物フォトグラファー、ビル・カニンガム。アナだけでなく、ファッション界の多くの人々が彼の審美眼に絶大な信頼を置いています。でも何も知らずに彼をニューヨークの街で見かけたら、”エキセントリックなおじいちゃん”としか思わないかもしれません。なぜなら彼は、作業着のような青いジャケットを羽織り、カメラを首からかけて自転車でニューヨークの街を走り回り、突然知らない人に近づいていって写真を撮り始めるから。

でも映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』 を見て、ビルのプロフェッショナリズムと絶えることのない笑顔に、理想とする働き方を見たような気がしました。

1929年生まれのビルは今年85歳。80歳を超えた今もなお、雨の日も風の日もニューヨークの街へ繰り出して、街行く人のファッションをひたすら撮り続けています。そのキャリアは50年以上。「タダで着飾った有名人に興味はない」「大女優を撮らない大バカと言われようが、撮るかどうかはファッション次第だ」と言い、有名人・一般人関係なく自分が魅力的だと思ったファッションをひたすら撮るのが彼の信条。長いものに巻かれることなく、どこまでも平等で自分に正直。私たちが「こうありたい」と願うけれど、実際にはなかなか難しいあり方を、彼はごく自然に身につけています。

ビルは好きなことに情熱を傾ける一方、自分にとって不要だと思えることを徹底して”断捨離”しています。ファッションという華やかな世界に身を置きながらも、普段の生活はいたってシンプル。トイレやシャワーは共同、キッチンもなく、簡易ベッドと写真を保管しているキャビネットだけの部屋に住み、「コーヒーは安ければ安いほどおいしい」と言い、トレードマークの青いジャケットは道路清掃員が着る作業用のもの、雨の日用のポンチョは破れたらガムテープで補修。ファッションを撮ること以外のモノ・コトへの執着が全く見られません。

また、ファッション関係のパーティーへ出かけても、他の編集者のようにそこで出されるお酒や食事を口にすることはありません。それは、「パーティーの目的はニューヨーク・タイムズ紙の取材であり、飲み食いじゃない。ニューヨーク・タイムズ紙の看板も汚せない。だから決めた、水一杯も口にしないとね。食べてから行く、それだけのことだ。置かれた状況と距離を置くとより客観視できる」という考えがあってのこと。自分の信念のもと仕事に徹するその姿は、まさに真のプロフェッショナル。

長年の功績がたたえられ、フランス文化省から芸術文化勲章オフィシエを受勲した際のパーティーでは、「私のしていることは仕事ではなく喜び」と言っていたビル。その言葉を聞いて、彼のファッション・スナップに対する純粋な愛情や情熱を肌で感じるような感覚を覚えました。そしてこの言葉を裏付けるものが、彼の笑顔にありました。何の迷いもなく、心から自分の人生をこのように表現することができるようになったら、彼のように笑顔溢れる毎日を過ごせるのかもしれません。

仕事だけでなく、生き方のヒントがたくさん詰まった本作品、本日2014年2月4日(火)にDVDが発売されます。皆さんもぜひ、ビルの生き方を画面を通して感じてみませんか?


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